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2013年5月30日 (木)

「河野談話」を乗り越えて 従軍慰安婦「問題」の根本的解決に向けて Part 1 ‐橋下「騒動」を検証‐

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(写真は橋下徹大阪市長のツイッターより)


橋下徹大阪市長は5月26日、自身の従軍慰安婦に関する発言について、「私の認識と見解」とする声明を発表し、翌5月27日、日本外国特派員協会で釈明の会見を行った(以下の映像参照)。







上記声明において橋下市長は、慰安婦問題に関する自身の発言に関する報道について、発言の一部が文脈から切り離され、断片のみが伝えられることによって、同氏の真の「理念や価値観とは正反対の人物像・政治家像が流布してしまっていることが、この上なく残念」とした上で、「私は、21世紀の人類が到達した普遍的価値、すなわち、基本的人権、自由と平等、民主主義の理念を最も重視しています。また、憲法の本質は、恣意に流れがちな国家権力を拘束する法の支配によって、国民の自由と権利を保障することに眼目があると考えており、極めてオーソドックスな立憲主義の立場を採る者です」と説明した。

本ブログの記事「既存メディアに地殻変動? ‐産経・読売が朝日を名指しで批判‐」において、今回の橋下市長の発言に関する報道の流れについて、「日本の政治家の発言をメディアが不必要に大きく扱い、また反日勢力が大騒ぎし、それに中国・韓国政府関係者やメディアが過剰反応し、それをまた日本のメディアが『海外(=特ア)はこんなに日本に対して怒っている』と報じる。今回もいつもの構図が再現されている」とコメントさせていただいた。橋下市長もこのプロセスに怒りを感じているであろうし、それが上記発言に表れていると思われる。

従軍慰安婦について同氏は、「日本兵が『慰安婦』を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙する、決して許されないものであることはいうまでもありません」、「日本は過去の過ちを真摯に反省し、慰安婦の方々には誠実な謝罪とお詫びを行うとともに、未来においてこのような悲劇を二度と繰り返さない決意をしなければなりません」としながらも、中国、韓国等の海外でのロビー活動によって、あたかも従軍慰安婦は日本特有の問題であるかのように論じられている現状の問題点を指摘する。

「かつて日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません。同様に、日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権を蹂躙した事実について、各国もまた真摯に向き合わなければならないと訴えたかったのです。あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのはフェアな態度ではありませんし、女性の人権を尊重する世界をめざすために世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ることになります。戦場の性の問題は、旧日本軍だけが抱えた問題ではありません。第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、旧ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました」。

「私の発言の真意は、兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題が旧日本軍のみに特有の問題であったかのように世界で報じられ、それが世界の常識と化すことによって、過去の歴史のみならず今日においても根絶されていない兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題の真実に光が当たらないことは、日本のみならず世界にとってプラスにならない、という一点であります。私が言いたかったことは、日本は自らの過去の過ちを直視し、決して正当化してはならないことを大前提としつつ、世界各国もsex slaves、sex slaveryというレッテルを貼って日本だけを非難することで終わってはならないということです」。

もし、日本だけが非難される理由が、戦時中、国家の意思として女性を拉致した、国家の意思として女性を売買したということにあるのであれば、それは事実と異なります」。

「過去、そして現在の兵士による女性の尊厳の蹂躙について、良識ある諸国民の中から声が挙がることを期待するものでありますが、日本人が声を挙げてはいけない理由はないと思います。日本人は、旧日本兵が慰安婦を利用したことを直視し、真摯に反省、謝罪すべき立場にあるがゆえに、今日も根絶されていない兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題に立ち向かう責務があり、同じ問題を抱える諸国民と共により良い未来に向かわなければなりません」。

橋下市長の主張は、従軍慰安婦が日本だけの問題であるかのように矮小化された現実を明確に指摘している。一部には同氏の考えを、「他の連中が泥棒したのだから、日本がやったって構わないだろう」と罪を正当化するような議論だと批判する向きもあるが、それは曲解も甚だしい。氏の考えの主旨は、女性に対する人権侵害を日本が反省するのは当然だが、同時に、同じことを行った諸外国も同様に反省すべきであり、一人日本に罪を被せて頬かむりすることは、未来志向で女性の人権を考える上で障害になるということだ。それは、「未来に向けて、女性の人権を尊重する世界をめざしていきたい。しかし、未来を語るには、過去そして現在を直視しなければなりません」という同氏の発言に明確に表れている。

橋下市長はまた、上述のように、「もし、日本だけが非難される理由が、戦時中、国家の意思として女性を拉致した、国家の意思として女性を売買したということにあるのであれば、それは事実と異なります」と、従軍慰安婦問題で強制連行はなかったことを明確にしている。反日メディアによってこれほど押し込まれた中で、この点を明記していることは評価に値する。

従軍慰安婦に対する補償に関しては、「現在、元慰安婦の一部の方は、日本政府に対して、国家補償を求めています。しかし、1965年の日韓基本条約と『日韓請求権並びに経済協力協定』」において、日本と韓国の間の法的な請求権(個人的請求権も含めて)の問題は完全かつ最終的に解決されました」とし、元慰安婦(と称する女性)による請求が正当でないことを指摘している。

よく議論されていることだが、戦中の韓国に対する補償は正当な国際条約によって既に解決されたものであり、それをどう分配するかについては、あくまで韓国の国内問題だ。韓国内において、慰安婦とされる人々に対する補償がなされなかったからといって、個別の補償を日本政府に求めるのは筋違いであり、それが正当化されるのであれば、国際条約など意味のないものとなってしまう。まぁ、「法治国家」とは名ばかりの韓国が、そうした論理を理解できないのは止むを得ないのかもしれないが…。

橋下市長の声明、そして会見での発言は概ね賛同できるものだったと考える。しかし的確と思われる批判もある。

池田信夫氏はBLOGOSでの「無内容だった橋下会見」と題する記事で、橋下市長の会見は、「彼の準備不足と海外プレスの無知があいまって、ほとんど内容がなかった。前からいっているように、争点は慰安婦の存在ではない。それは自明であり、日本特有でもないのだから、70年もたって議論するような話ではない(戦時中はもっと悲惨な話がたくさんあった)。それなのに会見の大半は、これについての儀礼的な謝罪に費やされた」と批判。

「橋下氏が今やるべきなのは『女性の人権』について外交辞令を並べることではなく、河野談話に代表される日本政府の曖昧な態度を改め、『強制連行』がなかったという事実を確認することだ。特に河野談話の中の『官憲等が直接これに加担したこともあった』という根拠のない記述を修正する必要がある」と指摘。

橋下市長は会見で、河野談話を「否定するつもりはありません。ここに書いてあることは概ね事実だと僕は考えています。しかし、この河野談話は、肝心な論点については、曖昧不明確にしています。[・・・]国家が組織的に、国家の意思として、女性を拉致した、人身売買した、そういう事実はないというのが、日本の多くの歴史学者の見解であり、河野談話の後に出された2007年の閣議決定でも、日本政府の見解として出ております。韓国の皆さんが、もっとも関心を寄せている、この核心的な論点について河野談話は逃げているのです。これが日韓関係が改善しない最大の理由だと思っています。ですから私は河野談話を否定する、修正するというつもりはなく、明確化すべきだと考えています」との発言を行っている。

それについて池田氏は、「ここがわからない。河野談話の最大の問題は、軍が強制連行した証拠はないのに『官憲の加担』を認める矛盾した記述なので、2007年の閣議決定に従うなら、この部分は削除するしかない。どう『明確化』するのか。この問題を韓国と議論するのは無駄なので、重要なのは欧米の政府やメディアを説得することだ。その意味で今回の会見には期待したが、何も出てこなかった」と痛烈に批判している。

池田氏の指摘通り、「捏造」された従軍慰安婦「問題」を日本に押し付けようとする韓国とこの件について議論することはナンセンスであり、河野談話を元に日本を批判する欧米への情報発信こそが、この問題の「肝」であることは間違いない。その点に異論はない。しかし、慰安婦の存在は自明であり、日本特有の問題ではないため、「70年もたって議論するような話ではない(戦時中はもっと悲惨な話がたくさんあった)」という主張は、同氏一流の「傲慢」な論調であり、完全に誤っている。

池田氏のように、「何でも知っている方」にとっては「70年も前の問題」かもしれないが、欧米が自身の歴史は棚に上げ、現在も「過去の」日本による従軍慰安婦を問題にしていることは紛れもない事実だ。そうした観点から考えれば、橋下市長が欧米にも歴史的事実に蓋をしないよう求めたことは、意義のあることだと考えている。世の中、池田氏のようなご立派な方ばかりではないので。その点だけは付け加えておきたい。

いずれにせよ、河野談話が根本的な問題であるということは、(それを明言するかどうかは別として)多くの政治家、識者、国民が共有している認識であると言えるだろう。韓国がNYCのタイムズスクエアに看板広告を掲出し、「捏造された」従軍慰安婦「問題」を声高に世界に主張するのも、欧米の議会で慰安婦に関して日本だけが非難されるもの、行き着くところは白を黒と言い募った、1993年に発表された、いわゆる「河野談話」、正式には、「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」の存在にあることは間違いないのだから。

河野洋平氏は『朝鮮日報』(2012年8月30日付)の取材に対し、「私は信念を持って談話を発表した」、「(慰安婦の徴集命令を裏付ける証拠資料がないとする批判には)処分されたと推定できる」と述べたようだが(Wikipedia参照)、同氏の誤った「信念」、そして証拠資料は処分されたという、極めて主観的な「推定」によって、今なお日本、及び日本国民全体が汚名を着せられている。同氏が自己満足するのは勝手だが、それがこの国にどれほどの損害を与えたのかきちんと理解しているのだろうか。彼のような「反日」政治家が、国際社会におけるこの国の名誉を不必要に貶めてきたたという事実を、ここに銘記しておきたい。

最後に、今回の橋下市長による一連の発言に関しての評価についてまとめておきたい。ここまで「正論」を展開しながら、池田氏が指摘するように、「河野談話」を明確に否定しなかったことに関しては、「勿体ない」と感じざるを得ない。それでも、これまでの政治家が逃げ腰だった慰安婦に関わる事柄について、世界を巻き込んで問題提起を行ったことは、大いに評価できると考える。

Ayakikki氏は自身のブログの記事「◇【完全版】国際弁護人橋下徹のまるっと慰安婦問題弁明~安倍首相の評価は?」の中で、橋下市長の論点は、「世界中の国々において軍が売春婦を利用していた事実を隠ぺいしたままで、過去の日本の行為だけを非難する事は、不公平(アンフェア)である」、「反省するべきは、唯日本だけなのでは無く、世界各国がこの様な歴史的事実を直視して、これと向き合うべきであると。この観点からは、旧日本軍の慰安婦問題は、過去における事例の一つに過ぎず、現代に至るまで綿々と続く『戦場における性』の問題は、優れて現代的な問題なのであり、世界各国において、正面から取り組」むべき問題だという点にあると指摘。

その上で、「国際弁護人」橋下氏の記者会見は、自身だけでなく、日本の立場を適切に弁明し、代弁してくれたのではないかと論じる。そして、「日本政府や外務省が、これまで破れなかった難壁に、一穴を空けたのではないでしょうか…?」と評価している。全く同感だ。

今回の「騒動」に関しては、左翼はもちろん、保守からも橋下市長への批判がある。しかし「タブー」に挑戦してくれたという意味で、「橋下ここにあり」という、政治家・橋下徹の存在意義を十分に示してくれたものであったと肯定的に捉えたい。

次回は、河野談話が発表されるに至った経緯、そして従軍慰安婦「問題」を解決、あるいは少しでもそれに対する日本の主張を国際的にアピールするためにはどうすべきか、について議論させていただきたい。
(この章続く)

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コメント

sanaさん、こんばんは。

本ブログにお立ち寄りいただき、コメントいただきましたこと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

メアさんは、歴史認識に関してはすごく反日なんですよね。せっかく占領政策によって「洗脳」した日本人を目覚めさせたくないのかもしれません。ただ、沖縄県民への暴言(賛否はあると思いますが)で職を追われた方ですので、自由に発言される方だと聞き流すのがいいのかもしれません。

アメリカでも意見は様々ですが、日本人が歴史を語り始めると、その火の粉がアメリカにも及ぶ可能性があるので、「力業」で抑え込みたい人が多数派なのでしょうね。

そうではあっても、次回議論する予定ですが、アメリカと対決してでも守らなければならない日本の「信義」があることも事実だと考えます。安倍首相に無茶な要求をするつもりはありませんが、上手にタイミングを見計らって日本の名誉を回復することは、僕が生きているうちには成し遂げてほしいものです。

またお時間のある時に、本ブログにお立ち寄りいただければ幸いです。

Ayakikkiさん、こんばんは。

ご指摘の通り、どれほどの困難が伴おうとも、日本人の「名誉」の問題ですので、軋轢を恐れず、国際社会への発信をしなければならないと考えます。

これは安倍政権でなければできない「難行」だと思います。参院選で圧勝し、経済再生を果たし、無責任な政治家たちによって歪められた歴史を正すことが、必ず未来の日本人のためになると信じています。

全く同感です。
昨日、民法の番組で元アメリカ国務省のケビンメア氏が橋下批判をして、他のコメンテーターから原爆やパタヤの売春宿で非難されていました。
アメリカは国として、慰安婦問題は請求権も含め日韓基本条約で解決していると最高裁の判決を出し、今回の橋下発言については報道官はコメントしない、米軍は市長の謝罪を受け入れたとしているのに、どうして、元国務省のメア氏に日米分断に加担するような発言をさせるのでしょうか。
橋下市長は個人的には思うところもあるだろうが、日本の国益を考えて米軍にも米国民にも慰安婦の方々にも謝罪したのです。侵略も受け入れて表明しているのです。
この問題は日本と韓国の問題なのに、アメリカの議会で非難決議を採択させ、記念碑をつくらせ、国連に日米分断に寄与しているのはアメリカや国際社会なのです。
アメリカは安倍首相の歴史認識がアメリカの国益にならないとするなら、日本と韓国の問題にアメリカが関与するのも国益にならないと認識してもらえないのでしょうか。
国として認識しているなら、議会やアメリカ世論にも影響を及ぼさないようにしてもらえないのでしょうか。

鳩山政権や沖縄問題、小沢氏の中国詣でを日本にさせているのはアメリカであると私は思います。

◇橋下大阪市長問責決議案は否決されたものの・・・

Michさん、拙ブログへの丁寧な引用そして言及、ありがとうございます!

橋下大阪市長問責決議案が否決され、市長は反省の弁とともに、自身の発言責任問題に対しては終息宣言を表明しました。

しかしながら、在日米兵による性犯罪事件や、韓国との慰安婦問題が解決した訳では無いので、この問題は、今後も繰り返し「蒸し返され続ける」事でしょうね…。

否、むしろ日本は、もっと積極姿勢に転じて、世界に向けて「問題の根本解決」を訴えて行くべきなのです!それこそが「戦後レジュームからの脱却」なのだと想う!

> 次回は、河野談話が発表されるに至った経緯、そして従軍慰安婦「問題」を解決、あるい
> は少しでもそれに対する日本の主張を国際的にアピールするためにはどうすべきか、に
> ついて議論させていただきたい。

Michさんのブログでの展開を、大いに期待しております!

scissors

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