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2013年1月23日 (水)

アルジェリア人質事件に思う ‐「ジハード」など存在しない テロリストは単なる殺人者!‐

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(写真はmsn産経ニュースより)

アルジェリアで発生した人質事件について、同国のセラル首相が、日本人7名を含む8か国37名の外国人が犠牲になったと記者会見で述べた(TBS NEWSi)。

犠牲になられた、何の罪もない民間人の方々のご冥福を心からお祈りする。

安倍首相は21日付の首相官邸のfbページで、「世界の最前線で活躍する日本人が、何の罪もない人々が、犠牲となり、痛恨の極みです。残されたご家族の方々のお気持ちを想うと、言葉がありません」と、犠牲者とそのご家族の皆さんに哀悼の意を表した。

また、「無辜の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難します。我が国は、引き続き、国際社会と連携して、テロと闘う決意です」と述べ、テロとの闘いへ臨む決意を新たにした。

アラブ諸国には、宗教の違いにより、また、特に第二次世界大戦後にはイスラエルを巡る対立から、歴史的に欧米に対する不信感がある。象徴的だったのは、2001年に発生した「アメリカ同時多発テロ事件(以下911)」発生直後、CNNがオンエアした、旗を振ってそれを喜ぶパレスチナ人の映像。さすがにCNNも「問題あり」と判断したのか、その後はほとんど放映されなくなったが、利害関係のない日本人である僕が見てもショックを受けたことを覚えている。

一方、その911以降、アメリカのアラブに対する強硬姿勢が目立ち始めた。アフガニスタン紛争イラク戦争、そして国内におけるイスラム系住民への人権侵害など。そうしたアメリカの動きが、アラブ世界の欧米を中心とした外国、とりわけアメリカに対する根強い反発を助長した。

アラブ側がアメリカを批判する理由のひとつに、政治的側面におけるアメリカのアラブ諸国に対するダブルスタンダードがある。

例えば、イラク、イランなどには強硬姿勢で臨んでおり、特にイラクには「大量破壊兵器を所持している」と「因縁」をつけ、サダム・フセイン政権を潰したにも関わらず、親米であるサウジアラビア、オマーン、アラブ首長国連邦などの絶対君主制国家による「人権侵害」は問題にしない。

アラブの春によって長期独裁政権が崩壊したチュニジア、エジプト、リビア、そして現在も事実上内戦状態にあるシリアなどは、カダフィ大佐のリビアを除けば、アメリカがその政治体制を容認してきた国々である。

また経済的には、アメリカを中心とした欧米諸国の国際石油資本(石油メジャー)によるエネルギー利権支配に対する反発がある。彼らはアラブにおいてその利権を独占することにより、長年に亘ってアラブ人の側からすれば、「搾取」と思われるような利益を手にしてきた。

現在は、石油メジャーによるかつてのような圧倒的な支配という状況は変わってきているとはいえ、エクソンモービル、BPなどスーパーメジャーと呼ばれる彼らの存在感は変わらずに大きなものがある。

さらには、アラブにおける各種紛争に対する、アメリカの場当たり的な対応もまた、アラブ人の不信感を強める原因となっている。

例えば、1979年に当時のソ連がアフガニスタンに軍事介入を行った際、911の首謀者とされているウサマ・ビン・ラディンは、アメリカのCIAなどの援助を受け、兵士兼スポンサーとしてソ連軍と戦った。この時、ビン・ラディンとアメリカは、共通の敵ソ連を撃退するため、いわば共に戦ったわけである。

しかし1989年のソ連軍撤退前後から、ビン・ラディンは反米色を強めアルカイーダを結成。1991年の湾岸戦争を経て、母国サウジアラビアが米軍駐留を認めたことにより怒りが爆発、急速に強硬な反米勢力となった。

結果論になるが、ソ連軍を撃退するためにCIAが「育てた」ビン・ラディンが、アメリカにおいて史上最悪のテロ事件を引き起こしたことになる。何とも皮肉な話だ。ビン・ラディンは一昨年アメリカ軍に殺害され、アメリカは911の「リベンジ」を果たすことができた。

ちなみにアメリカは、1980年に始まったイラン・イラク戦争の際も、後に宿敵となるフセイン率いるイラクと共に、イラン・リビアと戦い、1988年に停戦に持ち込んだ。イラク戦争でアメリカに囚われたフセインもまた、2006年に処刑された。

中東、北アフリカでのアメリカの行動は、基本的には「親イスラエル」と「石油利権確保」に基づいたものだと思われる。そう考えれば、ビン・ラディンやフセインに対する行動は、米国流の合理主義だとも言える。しかし傍から見れば、とりわけアラブ人にとっては、「昨日の友は今日の敵」といったアメリカの動きは、傲慢かつ唯我独尊と思われても仕方がない。

アラブと欧米の間には、無宗教、あるいは汎神論の日本人には理解不能な壁が聳えたっている。それは、十字軍に代表される、宗教的対立を背景とした、終わりなき政治・経済問題だと言える。

さて、今回のアルジェリアでのテロの目的が何であったのか、現在までのところ全く分からない。実行グループ「覆面旅団」のベルモフタール司令官の報道官は、「犯行の目的は、フランス軍のマリからの撤退と、服役中のテロリストの釈放であり、人質の殺害ではなかった」(FNN)と述べているようだが、テロリストたちは、プラントの居住区に侵入した直後に日本人を射殺したとの報道もあり(msn産経ニュース)、それが事実だとすれば、上記報道官の発言と全く矛盾する。

その目的が反欧米のイスラム原理主義的ものだとしても、あるいは身代金目的の「誘拐ビジネス」であったとしても、決して許されることのないテロであることに変わりはない。

その目的がいずれであれ、イスラム過激派は自分たちのテロ行為を、「ジハード(聖戦)」と称し正当化しようとする。「ジハード」とはそもそも、「努力」「奮闘」の意味であり、「コーラン(クルアーン )」が「神の道において奮闘せよ」と命じていることである。それを過激派たちは我田引水の解釈を行い、異教徒、特に欧米に対するテロ行為を、あたかもコーランが命じる「義務」であるかのように利用しているわけだ。

解釈は人それぞれではあるが、僕はテロリストが主張する意味での「ジハード」など存在しないし、多くのムスリムは彼らの主張を許容しないと考えている。僕のムスリムの友人たちも同じ見解であった。

僕は決して、ムスリムにのみ問題があると主張したいのではない。むしろパレスチナ問題においては、イスラエルよりもパレスチナ側にシンパシーを感じている。アメリカを始めとする欧米諸国による、イスラエル重視の政治的行動は、アラブ人にとっては耐え難いものだろう。

事実、アフガニスタン、イラクでの自爆テロなど、世界中で発生しているイスラム過激派によるテロは、そんな彼らの気持ちの発露だろうと推察する。しかしながら、どれほど「崇高」な目的があったとしても、罪のない人々を殺害することなど許されるはずがない。

無宗教である僕には、「神」というものが存在するのかどうかは分からない。ただ、もし存在するとして、それが殺人を肯定するような存在であるのならば、それはもはや「神」と呼ぶに値しないと考える。

古今東西、宗教によって多くの人間が命を奪われたことは承知している。人を救うべき宗教が、人の命を奪う原因となってしまうとは、誤解を恐れず言えば、皮肉を通り越して滑稽ですらある。

最後にもう一度。どれほどの苦境にあろうとも、どれほど他者への憎しみに溢れようとも、どれほど崇高な理念を全うする手段であると考えたとしても、罪のない人を殺すことに大義などない。イスラムに限らず、宗教の原理主義的テロリストに言いたい。あなた方には正義もなければ、正しい信仰心すらない。あなた方は単なる殺人者なのだ!世界の良心は、決してあなた方を許しはしない。


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コメント

ありがとうさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

仰る通り、そこが一番の問題なんですよね。アラブがどのような外交努力をしたところで、欧米の「親イスラエル」が変わることはありません。そして、アメリカが明らかにイスラエル側にいる以上、アメリカ主導での「中東和平」というのも、まずあり得ない。正直なところ、誰にも解けない問題です。

記事でも書きましたように、僕はどちらかと言えばパレスチナ支持であり、アラブ人にシンパシーを感じています。しかし、少なくとも罪のない一般市民を巻き込むテロを肯定することはできません。

人間の英知の限界を感じさせるのが、パレスチナを含むアラブにおける問題であると、いつも考えております…。

難しいですね。〝テロは許されない″というのは正論だとは思いますが、じゃあそれ以外に抑圧されているパレスチナやアラブの人々の要求を通す方法があるのか?ということなんだと思います。現在の所、彼等にはテロに訴える以外、何の手段も無いのは明らかですからね・・・・・・。

こーじさん、こんばんは。拙ブログにお立ち寄りいただき、またコメントをいただきまして本当にありがとうございます。至らない点ばかりの記事を評価していただきましたこと、心から嬉しく思うと同時に、すごく励みになります!!

今後もメディア論を中心に、日本の政治、国際紛争などについて執筆していきたいと存じますので、批判も含め、色々ご意見をいただければ幸いです。

引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

Mich

全くそのとおりだと思いました。説得力のある文章に感心させられました。勉強になります。ありがとうございました。

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