New York Timesで「日本は尖閣を盗んだ」と主張 ‐「親中」ニコラス・クリストフの激しい「反日活動」‐
(ニコラス・クリストフ氏 写真はWikipediaより)
1月17日付YOMIURI ONLINEは、The New York Times(以下Times)のコラムニスト、ニコラス・クリストフ(Nicholas D. Kristof)氏が、1月5日付の同紙 'China’s New Leader, and the Islands Dispute' と題したブログ上の記事で「日本は(日清戦争の)戦利品として事実上(中国から尖閣を)盗んだ」と主張し、尖閣に「領土問題は存在しない」とする日本政府の立場を「ばかげている」としたことを報道。
これに対して、総領事館の川村泰久首席領事が15日、クリストフ氏と面会し、「戦利品」との主張は「事実に反する」と抗議し、日本政府の立場についても「国際法上、正当だ」とし、それに対し同氏は日本側との意見交換を続けたいと述べるにとどまったことも伝えた。
クリストフ氏については、本ブログの記事「安倍首相を「右翼の民族主義者」と呼ぶNew York Times ‐朝日に洗脳されたTimesに日本を論じる資格なし‐」で、Timesの日本に対する「偏向報道」を批判した際、同紙の日本に関する報道を歪めてきた人物として簡単に紹介させていただいた。
クリストフ氏とはどのような人物なのか。興味のある方は、上記クリストフ氏のリンク先Wikipediaページで、日本語で彼の経歴詳細が確認できるが、以下少し紹介させていただく。
同氏はハーバードを卒業後、ローズ奨学生としてオックスフォードで学んだ。この奨学制度は世界最古の国際的フェローシップ制度であり、オックスフォード大学の大学院生に与えられる。この奨学生になることは非常な難関であるため、アメリカにおいては、ローズ奨学生=将来の超エリートと考えられている。ちなみに、過去の奨学生の中で日本で知られているところでは、ディーン・ラスク(David Dean Rusk)元国務長官、ビル・クリントン(William Jefferson "Bill" Clinton)元大統領、マイケル・サンデル(Michael J. Sandel)ハーバード大学教授など。
その選りすぐりの「超エリート」はTimesに入社後、LA、香港、北京、東京の特派員、支局長を経験した後、2001年からTimesのコラムニストとして定期的に、主にアジア、中東、アフリカ関連のトピックスについて執筆している。
1988年には、中国系アメリカ人シェリル・ウーダン(Sheryl WuDunn・伍潔芳)と結婚し、1990年には彼女と共に、天安門事件に関する報道で、ピューリッツアー賞報道部門国際報道賞を受賞している。その後、2006年には、ダルフールにおける「民族浄化」に関するTimesのコラムでの論説で、報道部門論説賞として、2度目のピューリッツアー賞を受賞した。
こうした経歴を見ると、表向きは「超一流ジャーナリスト」に見えるであろうし、事実、彼の報道、論説にはかなり優れたものも多い。ただ、こと日本に関しての記事となると、歴史的事実を十分認識せず誤った前提に立ち、また、偏見に満ちたものがほとんどであると断じざるを得ない。これはおそらく、彼が中国に長く勤務したこと、また、上述の中国系アメリカ人妻の影響が大きいと考えられる。配偶者が中国人なので、自身の論説においても「親中全開」。まぁ、非常に分かりやすい構図ではある。それがジャーナリストとしての倫理という観点から見れば、大きな問題だと思うが…。
というのも、これはジャーナリズムの学部1年生が習うレベルの話なのだが、利害の対立がある事柄を報道する場合、その一方に関係のある記者にはその問題について取材させない、という原則がある。
例えば、僕がアメリカの田舎町の新聞社でインターンとして働いていた時、留学生に関するちょっとした企画を思いつきキャップに提案してみた。彼曰く、「企画は良いが、お前は留学生なので、このテーマについては取材させられない」とのことで、アメリカ人の同僚が取材することになった。特に日本や日本人が絡む問題ではなかったので、正直呆気にとられたが、彼は留学生である僕を、一種の「ステークホルダー」と見做したのだろう。
クリストフ氏は2001年以降、Timesの「記者」ではなく、あくまで「コラムニスト」として論説を行っているので、その裁量の自由さを考えれば、必ずしも上述の原則は当てはまらないのかもしれない。しかし、もしユダヤ資本であるTimesの紙面において、ユダヤ人に関連したコラムニストが「親イスラエル」の論調を垂れ流すことを、経営陣としては善しとするのだろうか。
それはまずあり得ない。Timesのパレスチナ‐イスラエル問題に関する報道については、両サイドから、それぞれ、「親イスラエルだ」、「新パレスチナだ」との批判があるが、少なくとも同紙をここまでの新聞に育て上げた、アーサー・ヘイズ・ザルツバーガー(Arthur Hays Sulzberger)氏は、自身がユダヤ人であることを強く意識し、「親ユダヤ」と見られないよう常に気を配っていたし、その伝統は今も変わっていない。
要は、イスラエルとは違い、Timesにとっては日本など「どうでもいい国」なので、多少反日に過ぎるコラムニストが、親中・親韓の記事を書こうが構わない。日本がどうなろうが、合衆国の利益を大きく毀損しない限りにおいては問題にしない、ということだろうと推察する。
クリストフ氏のこれまでの親中・反日記事については、上記の当ブログの記事でも指摘した通り、2010年9月10日に、「1972年にアメリカが沖縄の施政権を日本に返還したため、尖閣諸島の問題で日本を助けるというばかげた立場をとるようになった。米国は核戦争の危険を冒すわけがなく、現実的に日米安全保障条約を発動する可能性はゼロだ」とし、「はっきりした答えは分からないが、私の感覚では、中国に分があるようだ」と主張した。「感覚」だけではなく「妻の影響」であることは明らかだが、ジャーナリズムの世界に身を置く者が、「感覚」で結論を出すとは、世界中のジャーナリストがずっこけるような凄まじい主観だ。
最近では、2012年9月19日付のTimesにおいて、以下で議論するが、台湾国立政治大学の学者・ HAN-YI SHAW氏の主張を根拠として、「私は中国の立場に同情的だ」「1895年に日本が事実上中国から戦利品として島を盗んだことを示す政府文書はとても興味深い」など論評している。
これ以外にも、同氏の「日本を貶める」ための記事は枚挙にいとまがないが、英語ができ、彼のコラムに興味がある方は、「Nicholas D. Kristof Japan」のキーワードでTimesの記事を検索していただきたい。20年近くに亘る彼の「業績」がよくご理解いただけると思う。
さて、ここからは、読売が報じた今回のクリストフ氏のコラムについて議論してみたい。これまでの彼の議論からも読み取れることだが、同氏が主張したいことは、「中国による尖閣領有権の主張には正当性がある。よって、日本は領土問題の存在を認めるべきだ。米政府も『中立』を装っているが、結局は日本サイドに立っている。そんなことをしていたら、日本のために、『無駄に』アメリカ軍を動かさなければならなくなるのだ。そんなことは許されない」ということに尽きる。
その主張には、中国というアジアの軍事大国を敵に回して日本のために戦う必要はない、とアメリカ国民に繰り返し伝えることにより、日米安保を形骸化しようという意図があり、一方で、「Timesの一流コラムニストである私が中国の言い分を認めているのだから、日本もそれに従うべきだ」といった傲慢な思想が感じ取れる。
しかしながら、クリストフ氏が「唯一」の根拠としている台湾の学者・ HAN-YI SHAW氏の主張は、日本人で尖閣諸島に関する知識がある方であれば、誰もが容易に反論できる程度の「代物」であり、その主張の和訳、及びそれに対する反論は、「日本の自存自衛を取り戻す会」代表・金子吉晴氏が自身のブログ「金子吉晴(日本の自存自衛を取り戻す会)」における、「This article by Han-Yi Shaw, a scholar from Taiwan 英訳その1」「This article by Han-Yi Shaw, a scholar from Taiwan 英訳その2」で明確にされているので、そちらをご参照いただきたい。というのも、和訳なしに単に金子氏の反論を紹介してもちぐはぐになってしまうので、まとめてご覧いただくのが最も分かりやすいと考えたためである(僕自身が原文を和訳することを「省略」させていただきたいという気持ちもあり…。済みません…)。
それにしても、Timesに定期的に寄稿するコラムニストが、日本側が発表している無数の資料を一切無視し、台湾の学者一人の議論だけを根拠として中国の主張を正当化している短絡的思考(と言うよりは意図的な偏向だと思われるが)は、クリストフ氏のジャーナリストとしての資質を疑わせるに十分な事実であると同時に、それを掲載するTimesのレベルを体現していると思われてもしようがないだろう。
とは言え、Timesが偏向し、クリストフ氏が中国系妻の影響で「親中・反日」のコラムを書き続けるのを止める術は、我々にはない。コントロールできない問題をただ批判していても全く建設的ではない。
では日本サイドとしては何ができるのか。まずは、今回、川村首席領事が行ったように、海外紙の誤った論調には、日本政府が一つひとつに対してきちんと反論することである。しかしそれだけでは全く足りない。海外での「情報戦」では、日本は圧倒的に特アにやられっぱなしであるのが現状だ。
今回のクリストフ氏のコラムも含めて、欧米の新聞のウェブサイトには「コメント」欄があり、そこには読者誰もが自由に意見を書き込むことができる。そのコメントは日本関連の記事が掲載された場合、ほとんど特アの主張で埋め尽くされる。おそらく彼らは組織的に、自国に有利なコメントを投稿しているのだろう。
対して日本は、今回のコラムでは日本人と思われる方が頑張って闘ってくださっているし、アメリカ人でも日本をサポートしてくださる方がいる。しかし僕としては、「コメント欄を単に英語ができる日本人、親日の外国人読者に任せておいてどうする」と言いたくなる。
こういう提案は少し「ダーティー」だと思われるかもしれないが、率直に言えば、世界中のメディアに対して、日本政府は「工作員」を通じて、日本に有利となる世論形成に努めるのが、国家として当然の戦略であろう。僕がフォローしているのは、Times、The Washington Post、The Guardianなどに過ぎないが、世界各国の主要紙でこうした「コメント活動」を続けることは、小さなことかもしれないが、その蓄積は必ず日本国にとってプラスになる。
政府に提言したいのは、外国メディアに対する「諜報員」を使って、世界中のメディアにどんどん日本の主張を発信せよ、ということ。日本人にとってはアンフェアだと思われる手法かもしれないが、海外では諜報活動のためには手段は選ばない。日本のインテリジェンスも、遅きに失しているとはいえ、そろそろグローバルスタンダード程度にならないと、物理的な力のみならず、情報戦でも特アに惨敗するのは目に見えている。
P.S. 僕は英語であれば大丈夫ですので、いつでも外国紙担当の工作員になる準備はできています。政府関係者の方、その気になったらお気軽にお声掛けください(笑)!
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