
最高裁大法廷は10月17日、2010年の参議院選挙(選挙区)で最大5倍であった「1票の格差」について、「投票価値は著しい不平等状態だった」として、「違憲状態」と判断を下した。
それに止まらず、「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ」るべきだと踏み込み、田原睦夫裁判官は、「13年参院選が現行法の枠組みの下で行われるならば、選挙無効の判断をもって対処すべきものと考える」とまで述べている(10月17日付日経新聞Web刊参照)。
確かに、現行の参議院選挙制度において1票の格差を是正しようとすれば、前参議院議長の西岡武夫氏が主張したような、選挙区を廃止し、比例代表を全国9ブロックに分割して格差を1.15倍程度に抑える、というような方向性が望まれるのかもしれない。しかし素朴な疑問として、現状の参議院を維持する必要があるのだろうか?
参議院に期待される役割は、衆議院に対してのチェック機能。つまり一院制では議論が一面的になりがちな弊害を、かつては「良識の府」と呼ばれた参議院で再議することにより抑止することだ。
しかし現状は、選挙制度は衆議院と似たような仕組みであり、議論の視点も、とても参議院独自のものがあるとは考えられない。つまり二院制に期待される役割を全く果たしていない。それどころか、各党とも知名度があるだけで、およそ政治家としての素養があるとは思えない候補を擁立し、ただただ数を確保しようとしているだけである。
ここで諸外国の上院(日本の参議院に相当)の在り方に目を向けてみたい。まず、アメリカの上院は各州(50州)あたり2名ずつの定数100名で、任期は6年間。イギリスでは貴族院と呼ばれ、庶民院(下院)が通過させた法案を、専門知識を持つ貴族院議員が精査し、修正することが重視されている。貴族であることを前提とし、その特権の一部として議会に招集されているため、ごく一部を除いて彼らは歳費は受け取らない。現在の議席は約700名。
ドイツ連邦参議院、カナダ上院は各州の代表という位置づけで、いずれも選挙は行われない。議席数はそれぞれ約70名と約105名。フランスでは元老院が上院であり、間接選挙で選出され定数は343名。米英独加仏とも下院議員は日本の衆議院議員同様、有権者による直接選挙で選出される。
諸外国との比較で分かることは、フランスはやや日本に似てはいるものの、各国とも上院議員は下院議員とは全く別の選挙体制で選出されるか、あるいは選挙がないということである。このように明確な差異があるのであれば二院制の価値も見出せるが、日本の現状では全くその役割を果たしていない。二院制である意味がないのだ。
では日本での参議院はどうあるべきか?当然、これが絶対という制度は存在しないが、少なくとも衆議院とは異なる哲学で組織されるべきだ。とは言え、今更イギリスの貴族院のようなものを創設することは不可能なので、個人的にはアメリカの上院を参考にすべきではないかと考える。
アメリカの二院制の考え方は、一院は輿論に敏感な人民の院(下院)として、もう一院は各州を代表する院(上院)とするというものだ。選出定員は州の人口や面積などに関係なく、上述のように各州一律2名とされている。これは建国当初に人口の多い州と少ない州で対立する利害を調整するためにコネチカット州の提案により生み出された策で、「大妥協」(Great Compromise) と呼ばれるている(Wikipediaより)。
日本においてもこれを参考に、参議院議員は地域の代表者として各都道府県2名ずつで定数94名。日本よりはるかに国土も大きく、人口も多いアメリカにおいて上院議員が100名で政治が行えるのであれば、日本で94名では不可能だということはないだろう。
選挙制度に関しては全くの素人からの、相当単純な発想による提案だということは理解しているが、最低でもこの程度の改革を行うことが、参議院を期待されているような院として機能させる手段と言えるのではないだろうか。
もちろん来年の参院選までにということではないし、他にベターな案も多数存在すると思う。ただ、今のような、議員が自身の既得権益を守るためだけに小手先のマイナーチェンジを続けることは決して許されない。今の日本にとってどのような二院制が望まれるのか、そして参議院をどう改革していけばより良い立法府になるのか、国民的な議論が必要だ。議員連中だけに任せておいてたら、百年河清を俟つことになることだけは間違いない。
もし大きな改革がなされないのであれば、いっそ一院制にするしかない。良識もチェック機能もない、政局に利用されるだけの今の「ミニ衆議院」のような参議院などあっても、税金の無駄遣い以外の何物でもないのだから。
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